城内へ続く長い道の両端に、一寸の狂いも無くズラリと整列した兵士達。
……並ぶ彼等の間から真っ黒な獣が何匹か顔を出し、明らかに敵意をむき出しにして低く呻いている。
……老紳士の後ろを歩きながら野放しにされている犬を見下ろし、使者達は顔をしかめた。
「………確かあれは……魔獣でしたね…。………たくさんいる様ですが…」
「ああ、ライマンの事ですかな?……知っておられるという事は、以前行われた我が国と貴殿の国との国交の場に貴方方もいらっしゃいましたか。………ライマンは戦力として飼われている特別な獣でして。……他にも、ワイオーンなどの…ちと凶暴なのもおります」
整列する兵士達の中には、ライマンを撫でて落ち着かせている者もいた。
………あちらこちらから、あの赤い瞳が自分達を睨んでいる。
「………貴殿……アレクセイ殿と申しましたな。………貴方もあの場に使者として来ていらっしゃったな………」
そう言うと、アレクセイは微笑を添えて一瞬振り返ってきた。
「………………お互い、苦労しておりますな」
普通ならば、守りの兵士達がズラリと並んでいる筈の城内は、有り得ない程人気が無くガランとしており、たまに目につくのは忙しなく駆け回る召使ぐらいだった。
やけに長い螺旋階段のある広間に着くが、そこにも兵士の姿は無い。………と言うかそれ以前に、緊張感の欠片も無い。
のほほんとした温い空気が、花を散らしながら漂っていた。
………すぐ隣りを、大臣らしき初老の男がにこやかに挨拶をして通り過ぎて行った。
兵士はいないのか、と何となく訊いてみれば…。


