「………バリアン兵士が、どんどん送り込まれている。…あまりにも礼儀がなっちゃいないし、勝手に木を切り倒しているからね……つい先日、長老様がとうとう『虫殺し』の命をお出しになったよ…」
…狩人の世界には、デイファレトの王とは別に上に立つ者が存在する。
それが『長老』。何処にいるのか全く分からない不思議な存在で、唯一その姿を拝めるのは『式』の時のみである。
異端者を忌み嫌い、街の民とも接触を避けているその『長老』が………命を出すなど………滅多に無い。……それ程、ご立腹ということなのだろう。
「………『虫殺し』って何さ?」
何気無く聞いていたらしいユノが、片手でレトの背中を擦りながら二人を見上げた。
「………ん―?……害虫駆除の事よ、王子様。良いも悪いも関係無く、異端者は問答無用で皆殺しって事。…この国に黙って入る方がいけないんだから。……ハードよねぇ…」
……つまり、大規模な殺人許可令。というか殺人命令。
やはり、狩人は怖い。
「………それじゃあ、あたし等はお去らばさせてもらうわ。…依頼放棄した事が、質の悪い依頼主にバレないうちにね。…そうそう、真北の方はやけに『嵐』が出るみたいよ。お空にも気を付けな。………アオイはあんたの手助けはしないみたいだけど、あたしは気前がいいからちょっとくらいなら助けてあげる。…何かあったらすぐ報せな」
「………すまないな」
マントを羽織直し、大きく翻してマナは背を向けた。
細身の背中が、妙に頼もしく見えるのは、気のせいなどではないだろう。
「ダンテ―、行くよ。何落ち込んでるの。初恋は実らないものなのよ」
「いつまでそのネタ引き摺るつもりだ」


