亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




―――ダン


―――ダン


―――ダン


―――ダン…














………そこら中から聞こえてくる…兵士達の奏でる音楽。

グルリと囲む戦士達は、握り締めた槍を皆揃って、固い床に…一定のリズムで突き続ける。

数百の…闘志の塊。闘志の唸り。



………殺せ、殺せ、という殺気に満ちた声よりも………妙に落ち着いたこの厳かな響きの方が、なんだか怖い。












「―――父上、如何致しますか…?………この場で今直ぐに殺るのは簡単ですし、一瞬で父上の不満は消え失せましょうが…………………捕らえたら捕らえたで、父上の楽しみは増えますよ」


爽やかな笑みで恐ろしい二択を提案するアイラ。
ふむ、と老王は数秒の間考え込んだ後、パッと顔を上げた。



「………どちらが賢明な判断か分からん。………軽く……殺さない程度で痛め付けながら、決めるかの……」

「………さすがは我が王!……一国相手にさえ……その、どこまでも非道なところが私は至極気に入っておりますよ!」

「……少し黙っておれ、ケインツェル」

手を合わせて無駄にはしゃぐ側近を無視し、老王は何とも意地の悪い笑みを浮かべ、ダラリと垂れた手を小さく振って合図した。


………アレクセイらを囲む兵士の輪が、徐々に小さくなっていく。




「………抵抗しないのかい…?………そんな人形の様に突っ立って………」

楽しそうなアイラに視線を移し、アレクセイは苦笑を浮かべた。



「………………大暴れしたいのは山々なのですが………あ―……手出しするな、という命令が下っておりますので………どうにもこうにも…」

「………えらく忠実なんだね。………でも……」