亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

―――この世界は、アレスという神によって創造されたと言われている。

…アレスは中央に穴の開いた小さな皿を宙に浮かべ、周りをぐるぐると回り続ける火の玉を、真下には涸れることのない噴水を置いた。

水が注がれた皿の上に、三つの葉を浮かべた。


………世界は皿の様に平らで、海の中央から淡水と海水が別れてわき出ている。
皿から溢れる海水は世界の外に零れ落ち、蒸気となり、雨となって地上に降り注ぐ。

水溜まりの様な世界には、葉の形をした三つの大陸が浮かんでいる。





三つの大陸にはそれぞれ、三つの大国があった。



―――…一つは、凍て付く氷の北の大陸『デイファレト』。

数十年前に燐国によって滅ぼされ、王政は崩壊。以来、国は氷の大地と化し、永遠の冬季という天災と病に見舞われた。そのため、今は僅かな民しか残っていない。
どうにか戦火から逃れた王族も、隣国の刃を恐れているためか、依然行方不明のまま。残された孤城には、空白の玉座しか無い。


―――……二つ目の大国は、熱風吹き荒れる砂漠の南西の大地『バリアン』。

戦争大国という悪名高き大国で、数十年前に隣国デイファレトの王が短命で終わったのを機に、一気に攻め滅ぼした。以来、バリアンは雨の降らない天災に見舞われ、大地は砂漠と化した。
今もその老王が玉座についているが、戦火を起こす気配も無ければ一切の外交もせず、鎖国状態が続いている。

―――…三つ目の大国は、緑溢れる南東の大地『フェンネル』。

…こちらはとある狂王による悪政から奇妙な呪いに見舞われ、激しい内紛が続いていた………………のだが。