「………その情報………残念だが……………………………………売れないねぇ」
…コムは、客であるバリアン兵士らの依頼を、面倒臭いとでも言うかの様に………欠伸をしながら拒否した。
…直後、コムに注がれていた幾つかの視線は、僅かだが殺意をちらつかせた。
「………なっ………………う、売れないだと!!」
「ええ、売れませんね。………………生憎、売る気はさらさら無いのぉ。……お前さん達には悪いが、他をあたってくれ」
買うのも買わないのも客の自由ならば、売るも売らないのも商人の自由。
全ての情報を売るつもりはない。
そこは売り手の独断と偏見。天気と同じ、気紛れなのだ。
あっさりと断った挙げ句、昼寝をしようと毛布を準備し始めるコム。
………しかしやはり…そんな事をバリアン兵士等が許す筈も無く…。
……先頭の男はコムが再び咥えようとした煙管に向かって、音も無く、短剣を振り下ろした。
冷たい一筋の風が頭上から降りてきたかと思えば、煙管に垂直の線が刻まれ、綺麗な切断面を見せながら先端の金具が床に落下していった。
………ただの棒になってしまった煙管を、コムはぼんやりと見詰めた。
「………こちらが頼んでいるというのに………無礼な!!………老いぼれめ……調子に乗りおって……!」
狭い店内に、男の罵倒と剣を鞘から抜く音が響き渡る。
微かな殺気はあっという間に肥大し、コムに集中した。
「………………無礼…?………人の私物を壊しておいて…言う台詞かのぉ?………気にいっておったのに…」


