亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





「………」


………やられた、とは思わない。これは想像していた範疇の一つ。
戦争大国と称される物騒な国ならば、そこを治める人間はそれ相応の対応をしてくるに違いない。
きっとずる賢くて、血の気の多い連中だ。



そう覚悟して遠路はるばる来たものの………ああ、やっぱりか。

やっぱりこういう流れになるのか。

………その頂点に立つ老王は、きっと若かりし頃は威厳高かったかもしれないが。
…老いた姿は予想していたよりも何だかひ弱で……臆病な小動物と変わらず、少し拍子抜けしていたのだが………。


………とんでもない。



(…………息子二人は、しっかりと血を継いでいますな…)









………しかもこんな若輩に、状況を流れに流された。

本当の悪者は、最初から表には出て来ないものだな、とアレクセイは思った。





(………さて…)

溜め息混じりにアレクセイは、今置かれている状況をもう一度確認する。



周りはおよそ、二百の兵士。扉の外は分からないが、多分それ以上。


脱出口は、ご丁寧にいつのまにやら鍵をかけられている大きな扉と、天井近くにある人一人通り抜けられる位の吹き抜けの窓。

外にはでかい鳥がうようよ。

おまけに今は明る過ぎる昼時。





(………どうしようか。…………………ああ、これは……非常にまずいですな。………………王にお叱りを受ける……)






………右ストレートで殴打される………いや、アッパーかもしれない。

とにかく我が王…彼女は、たとえ老人相手でもその鉄槌に容赦しない。




…………この状況よりも………そっちの方が怖いな、とか冷や汗をかきながら思った。