亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





………可愛らしく顔を赤らめる、目下の彼女の瞳に………また、涙が溢れていくのを、シオンは見詰めていた。





「…………………私、は……っ…………私は…………商人…です。………しがない………下級の………っ……ただの………薄汚い……っ………商人の……女…で……す…」











………悲しい。



………それ故に、悲しいのです。











どうしようもなく、劣等な身の上でしかない自分が…酷く……悲しいのです。


見えないけれど、確かにある………無情な、『差』が。

貴方が眩しくて仕方無い事が。

私には許されない事が。










悲しくて。






貴方が好きだと言ってくれているのに、応えられない自分が。

















………悲し…く……て……っ…。















「……………………………ごめんなさい…。………ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………ごめんなさ…」





















「…馬鹿だね、サリッサ」













次の瞬間………縮こまっていたサリッサの身体は、暖かくて、大きな両手に包み込まれた。


背中に回った彼の手は、サリッサを壊れ物でも扱う様に、しかし力強く、抱き締めた。



彼の体温が、鼓動が、伝わってくる。

頬に触れる彼の青い綺麗な髪が、くすぐたい。

耳元にかかる彼の吐息が、サリッサを更に熱くさせる。






頬を伝う涙は、密着する彼の衣服の胸元辺りに触れ、ジワリと………染み込んでいった。