亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~








………階段を降りる、彼の足音が響き渡る。
ゆっくりとしたそれは単調なリズムを刻みながら、徐々に大きく、そして近付いて来る。

夫人の叫びが木霊するが、彼は一切応えず、無言だった。
その間、彼の足音はより近く、より大きくなり…。














………サリッサの目の前で、鳴り止んだ。

























「………サリッサ。………顔を上げて」







…震える指先を隠し、サリッサは床を見詰めたまま、小さく首を左右に振った。

………顔を上げるなんて……そんな事…。













「………顔を上げなさい、サリッサ」












再度言われても尚、サリッサは首を振って拒否する。

………小刻みに震える彼女の細い肩を見下ろしながら、溜め息を吐いた。
その場で静かにしゃがみ込み、土下座する彼女を覗き込む様に顔を近付けて、囁いた。

















「………上げてくれないなら、私も土下座するよ?」











………そう言った途端、サリッサは弾かれた様にガバッと顔を上げた。

…王族様に土下座など、させてはならない…!



慌てて顔を上げたサリッサの目の前には………優しく微笑む、彼の嬉しそうな顔があった。





「………やっと顔を見せてくれたね。…君は少々強情なんだな」

「………っ…!」

そう言いながら、彼はサリッサの手を取り、ゆっくりと立ち上がらせた。


…冷たくなったサリッサの手を見下ろし、微笑を浮かべ、彼はその手を暖かな手で包み込んだ。


「………こんなに冷えて…。土下座なんかするからだよ…」