「………素姓…?」
…ああ、そうだ。
…私は、彼について何も知らないではないか。
………ただ、彼は…。
「………………『エス』家を御存じかしら?……ええ…御存じよね?………この国の民なら誰でも知っている名家ですもの…。………私達貴族の中の最上階級……いいえ、貴族と言うにはあまりにも高過ぎる身分…」
…背が高くて、青くて綺麗な髪で、ニコニコしていて、子供みたいに無邪気で。
「……エス家は…この第一大国デイファレトの…常に頂点に立ってきた家系。………常に、歴史に名を残してきた名家中の名家…」
悪戯好きで、私なんかの話を一生懸命に聞いてくれて、とても…とても優しくて。
優しくて。
私なんかを…。
……仕立てしか出来ない、お洒落なんかしたこともない、綺麗でも何でもない………。
………私…なんかを…。
「……戦争によって、この国の王政が崩壊した後………逃げ延びた王族……デイファレト王51世。………………………………………………彼はその……………………第1王子なのよ………!」
私を。
「………彼の親である51世の妻は…第二貴族の娘が選ばれましたの…。………王族と縁を持つのは、次は我が家!我がマノン家よ!…我が家は彼をかくまっていますわ…。……この…またとないチャンス…。…他の貴族に譲る訳にはいかない…。……そう思っていましたのに…」


