ギリッ…と奥歯を噛み締め、夫人はサリッサを睨んだ。
「………誰も信用しないと言っていた彼が………恋だなんて…!………しかも、貴女の様な小娘に!………信じられないわ…。彼に何を言ったの!どうやって本気にさせましたの!……ああ恐ろしい…!下級はこれだから嫌なのよ…!………非常識にも程がありますわ…」
………そんな…。
………彼は………あの時確かに…告…白を………してくれた。でも…。
………でも私は、知らない………私は何もしてないし、言ってない。たぶらかしたりなんかしていない。
………彼が………彼が…勝手に…。
「………私……私、何も…!」
「言い訳など聞きたくないわ!………とにかく、仕事が終わったらさっさとこの館から出て行ってちょうだい…。………そしてもう彼と会わないで。二度とこの館に近寄らないで!………身の程をわきまえなさい!商人風情が!彼に近付いてまだ何かする気?………貴女が遊びなのか本気なのかだなんて、関係無い!…これ以上彼を変えないで!!」
………私は…。
………そんな……遊びだなんて…。……………………本気……って…。……本、気…?
…あの時の情景が、再びサリッサの脳裏を掠めた。
…途端、サリッサの顔は紅潮した。慌てて両手を頬に添え、落ち着こうとするものの、上がった熱は下がる気配が無い。
夫人はそんなサリッサを見て小さく舌打ちした。
「………いいわ。………教えてあげましょう。………彼がどういう素姓の持ち主なのか………理解して頂かないといけないようね…!」


