夫人の声は室内に響き渡り、呼ばれたエリザベスは勿論の事、召使達も驚いて口を閉ざした。
………原因の分からない気まずい空気が漂う中、夫人だけがその場の主導権を握ったかの様に、皆に見られながらも平然とエリザベスに話だした。
「………お稽古がある時間でしょう?……部屋に戻っていなさい…」
「………はい…」
エリザベスは夫人の言う通り、踵を返して部屋から出て行った。
…同時に、周囲の召使達もそそくさと持ち場に戻って行った。
ご主人もご主人で、我が妻に何やら耳打ちされ、何も言わずに部屋を後にした。
………急に寂しくなった室内に残っているのは、夫人とサリッサのみ。
音という音の存在が許されない様な空気は相変わらずで……サリッサは落ち着かない様子で夫人の横顔をチラチラと見詰めていた。
………静かだ。……とても。
突っ立っているだけでどうする事も出来ず、不安げな表情で佇むサリッサ。
……乗じて自分も退室すればよかっただろうか…。
しかし今更遅いし…不自然だし……。
「―――…サリッサレム」
どうしようかなと考えあぐねていたサリッサに……不意に、夫人が自分を呼んだ。
慌てて視線を向けると………夫人の、何かを秘めたやけに冷たい眼光とぶつかった。
「………は…い…」
緊張と言い知れぬ不安のあまり、ボソボソとしか答えられないサリッサ。
夫人の顔が見れず俯いたまま、やや震える声で答えた。


