亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


ゆっくりと立ち上がり、サリッサは描きかけのデザイン画をテーブルに並べた。

………今日はほとんど仕事をしていない。
今更館に戻って仕事に取り掛かるのは、とてもじゃないが気が引けた。

目の前に生地もドレスも無いならば、針に糸を通しても仕方が無い。

家で出来る事といったら、最終的なドレスのデザインを考える事だろうか。
………細かい部分はまだ思案している途中だ。


瓶底が見えるくらいの残り僅かなインクに羽根ペンを付け、サリッサはくたびれたデザイン画を見下ろした。



………ピンク色。

………可愛らしい、ピンク色。







………花嫁の、衣装。












………花嫁。















………恋をした女性が憧れる様な……そんな…。



…好きな人に、綺麗な自分を見て欲しい。

…ほら、可愛いでしょう?綺麗でしょう?…って。




幸せになりたくて。





貴方に見て欲しくて。






貴方に喜んでほしくて。










それで……それでね…。


















鋭いペン先が、紙面を走る。


踊る様に、駆け抜けていく。
軌跡を残しながら、滑っていく。







何故だろう。





…それまで、考えもつかなかったデザインが………自分でもびっくりするくらいどんどん溢れ出てくる。




溢れてくる。








何故かしら。





私、凄くドキドキしてる。






楽しくて仕方無い。







どうすれば着ている人が綺麗に見えるか。

どうすれば、着てくれる人が喜んでくれるか。




………今までは、そう考えていた。