………揺れに揺れたサリッサの小さな心は、日暮れ時になる頃、ようやく落ち着いた。
…しかしまだ名残があるのか、普段胸の奥にある事など忘れてしまっている心臓は、いつもよりも大きく、静かな主張を繰り返していた。
………椅子に腰掛けたまま、ぼんやりと吹雪きの舞い散る窓の外を眺める。
だが、サリッサの瞳は何も映してはいない。
何処か虚ろで、涙の膜が張った彼女の瞳は、何度も何度も過去の情景を映し出していた。
(………………私………変…だな。………変なの…)
………何故か何も考えられない自分が滑稽に思え、サリッサは苦笑を浮かべた。
………今朝のあれは……何だったのだろう。
………悪い夢……冗談かしら…。
………冗談に決まってる…そうよ…。
…それに第一、私は………あの人の名前さえ知らない…し…。
何かの間違いだ…と、思い込もうとすると………また、あの時の情景がフラッシュバックとなって蘇ってきた。
………その度にサリッサは、独り……頬を赤く、染めた。
………好き…。
………好き…って。
………あの人は……私のことが………。
………嫌いにならないでって……。
……嫌い…?
………そんな………嫌いになったりなんか……しない…。
そんな……私は…。
………私、は……。
………私…。
「………仕事………しなくちゃ」


