亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~






………揺れに揺れたサリッサの小さな心は、日暮れ時になる頃、ようやく落ち着いた。

…しかしまだ名残があるのか、普段胸の奥にある事など忘れてしまっている心臓は、いつもよりも大きく、静かな主張を繰り返していた。




………椅子に腰掛けたまま、ぼんやりと吹雪きの舞い散る窓の外を眺める。

だが、サリッサの瞳は何も映してはいない。
何処か虚ろで、涙の膜が張った彼女の瞳は、何度も何度も過去の情景を映し出していた。





(………………私………変…だな。………変なの…)


………何故か何も考えられない自分が滑稽に思え、サリッサは苦笑を浮かべた。





………今朝のあれは……何だったのだろう。

………悪い夢……冗談かしら…。


………冗談に決まってる…そうよ…。

…それに第一、私は………あの人の名前さえ知らない…し…。














何かの間違いだ…と、思い込もうとすると………また、あの時の情景がフラッシュバックとなって蘇ってきた。


………その度にサリッサは、独り……頬を赤く、染めた。
















………好き…。



………好き…って。









………あの人は……私のことが………。








………嫌いにならないでって……。



……嫌い…?







………そんな………嫌いになったりなんか……しない…。







そんな……私は…。






………私、は……。















………私…。


















「………仕事………しなくちゃ」