亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


どうしたのサリッサ、何があったの?


…いつもより帰ってくるや否や、薄暗い部屋の隅で蹲ってしまったサリッサに、不安げな表情の母がしきりに声を掛けてきたが…。





「……何でもない。………何でもないの、何でも…何…何でも……ないから…本当に…」


マントで顔を覆い、サリッサはそんな台詞を繰り返すばかりだった。

………顔が熱い。凄く熱い。熱い、熱い、熱い。
…鏡なんて見れない……きっと真っ赤なのだろう。
おかしい程、真っ赤なのだろう。

馬鹿みたいに…。





男性と親しくなるなど、初めてだった。

男性から触れられるのは初めてだった。

あんなに近くに寄られるのは初めてだった。



………告白されるなんてこと………………初めてだった。













(……どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……どうしたらいいの…?)


胸が、苦しい。

激しい鼓動の波が、治まらない。

………ああ、泣きたい。何故だか知らないけれど、とても今は泣きたい。





落ち着こうとしても、身体はいう事を聞いてくれない。

自分とは違う、体温だとか、手の温もりだとか、彼の声だとか……全部、全部……一瞬で蘇っては消え、また浮かび上がってくる。





……誰かこの衝動を消してしまって。

耐えられないの。

なんだか怖いの。

怖くて仕方無い。

怖いの。




怖いの。












この揺れる感覚が、怖いの。
















「………何でも……無いから…何でも無いの…何でも無いの、何でも………何でも………っ………」