どうしたのサリッサ、何があったの?
…いつもより帰ってくるや否や、薄暗い部屋の隅で蹲ってしまったサリッサに、不安げな表情の母がしきりに声を掛けてきたが…。
「……何でもない。………何でもないの、何でも…何…何でも……ないから…本当に…」
マントで顔を覆い、サリッサはそんな台詞を繰り返すばかりだった。
………顔が熱い。凄く熱い。熱い、熱い、熱い。
…鏡なんて見れない……きっと真っ赤なのだろう。
おかしい程、真っ赤なのだろう。
馬鹿みたいに…。
男性と親しくなるなど、初めてだった。
男性から触れられるのは初めてだった。
あんなに近くに寄られるのは初めてだった。
………告白されるなんてこと………………初めてだった。
(……どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……どうしたらいいの…?)
胸が、苦しい。
激しい鼓動の波が、治まらない。
………ああ、泣きたい。何故だか知らないけれど、とても今は泣きたい。
落ち着こうとしても、身体はいう事を聞いてくれない。
自分とは違う、体温だとか、手の温もりだとか、彼の声だとか……全部、全部……一瞬で蘇っては消え、また浮かび上がってくる。
……誰かこの衝動を消してしまって。
耐えられないの。
なんだか怖いの。
怖くて仕方無い。
怖いの。
怖いの。
この揺れる感覚が、怖いの。
「………何でも……無いから…何でも無いの…何でも無いの、何でも………何でも………っ………」


