………スッと、彼の手が離れた瞬間、サリッサは無我夢中でドアノブを回し、扉を押し開けた。
廊下に出るや否や、サリッサの目の前に召使らしき老人の姿が目に入った。
……扉一枚隔てたすぐ向こうに、他人がいた。
サリッサは真っ赤に火照り、涙が浮かんだ顔を両手で覆い、「…すみません」とだけ呟いて老人の脇を駆け抜けた。
マントの端をギュッと掴み、長い廊下を走る。
……その間、背中に注がれる視線が途切れる事は、無かった。
サリッサの足音が消えていく中。
男は、扉の前に佇む老人を一瞥した。
「………盗み聞きとは……趣味が悪いね…」
「………失礼致します」
老人はそれだけ言うと、深く頭を下げ、階下へ降りて行った。
………自分以外、誰もいなくなってしまった部屋をぐるりと見渡し、溜め息を吐き…。
……先程彼女から貰った、小さな雪の飾りをもう一度眺め…懐にしまい…。
部屋を、後にした。


