亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



テーブルの上に広がったデザイン画を両手で掻き集め、荷袋に突っ込み、その辺に放置した。

椅子にかけておいたマントに手を伸ばし、羽織りながら扉に向かう。


「………サリッサ…?」

「………すみませんっ……今日は………もうっ………!」











早く。


早く……逃げ出したい。

ここから……逃げてしまいたい。


………どうして…?


…どうして私は………逃げているの?


………何が怖いの?






………何が…。
















例え様の無い奇妙な恐怖に駆られ、サリッサは乱暴にドアノブを掴んだ。



……その直後。ドアノブを回そうとしたサリッサの手に………色白の大きな手が、後ろから重ねられた。

ビクリと、サリッサは思わずドアノブを離そうとしたが………重ねられた手は、サリッサの手をしっかりと握り締めた。




………いつの間に、こんな距離を詰められたのか。

振り向かずとも、背中に伝わってくる体温や微かな吐息で、彼がすぐ後ろに立っているのが分かった。






………動けない。



……彼の顔を見れない。



彼はこんなに背が高かったのか。

細身に見えていたが、こんなにも、大きな身体だったのか。




自分一人くらい、簡単に覆い尽くせそうな…。












「………サリッサ」

すぐ耳元で、低い声音の…真剣な彼の声が聞こえた。

無意識に、サリッサの身体は震えた。
















「………同情でも…何でもいいから……嫌いにならないでくれ。………………ごめんよ…サリッサ。…………………………………………好きなんだ…」