亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~























………ぱさり、と。







指先から、真っ赤なリボンが落ちていくのが見えた。


床に横たわり、微動だにしないリボンと相反して、傷だらけのサリッサの指先は………小刻みに、震えていた。







頭の中は、真っ白だった。

今まで自分が何を考え、何を悩んでいたのかなど………一瞬で吹き飛んでしまった。





残ったのは、奇妙な空虚だけ。


何処かに感情を置いてきてしまったかの様に、今自分は、抜け殻そのものだった。










………何かの間違いだ。

…何かの悪戯に違いない。



そうに違いない。

だって…だって………だってそんな……。








………サリッサはわななく両手を胸に添えて隠し、何故か泣きそうになりながらも、彼に振り返った。

視線の先にあったのは、いつもどおりの………柔らかな笑みを浮かべた彼の姿だった。

「………………………………あの……」

「………何を怯えているのかな?……サリッサ。………私が怖いかい?」

目尻に浮かぶ涙を見付けられてしまったのか。彼は優しく微笑んで言った。

「………私が嫌い?」

「………い………いえ……」

サリッサはフルフルと何度も左右に首を振った。

「………私は、サリッサが好きだよ。とても好きだ。凄く……好きだ」

「………っ…」


……そう断言する彼は笑っているが……その綺麗な瞳は、笑ってなどいなかった。真剣な……まっすぐな……まなざしだった。









「…サリッサ」

「……………あのっ……」


……バッと、サリッサは視線を外し、床に落ちたリボンを道具箱に放り投げた。