………ぱさり、と。
指先から、真っ赤なリボンが落ちていくのが見えた。
床に横たわり、微動だにしないリボンと相反して、傷だらけのサリッサの指先は………小刻みに、震えていた。
頭の中は、真っ白だった。
今まで自分が何を考え、何を悩んでいたのかなど………一瞬で吹き飛んでしまった。
残ったのは、奇妙な空虚だけ。
何処かに感情を置いてきてしまったかの様に、今自分は、抜け殻そのものだった。
………何かの間違いだ。
…何かの悪戯に違いない。
そうに違いない。
だって…だって………だってそんな……。
………サリッサはわななく両手を胸に添えて隠し、何故か泣きそうになりながらも、彼に振り返った。
視線の先にあったのは、いつもどおりの………柔らかな笑みを浮かべた彼の姿だった。
「………………………………あの……」
「………何を怯えているのかな?……サリッサ。………私が怖いかい?」
目尻に浮かぶ涙を見付けられてしまったのか。彼は優しく微笑んで言った。
「………私が嫌い?」
「………い………いえ……」
サリッサはフルフルと何度も左右に首を振った。
「………私は、サリッサが好きだよ。とても好きだ。凄く……好きだ」
「………っ…」
……そう断言する彼は笑っているが……その綺麗な瞳は、笑ってなどいなかった。真剣な……まっすぐな……まなざしだった。
「…サリッサ」
「……………あのっ……」
……バッと、サリッサは視線を外し、床に落ちたリボンを道具箱に放り投げた。


