エリザベスの言った通り、彼はその翌日も何事も無かったかの様にやって来た。
…そして以前より頻繁に、夫人の使いらしき人が顔を出しに来るようにもなった。
………多分、また彼が部屋を抜け出してこちらに来ていないか監視も含めて見に来ていると思われる。
…が、使いが来る前に彼は素早くクローゼットやテーブルの下に隠れてしまうため、毎日の監視も虚しく終わっている。
………ならば彼の自室に直接訪ねて、いるかいないか確認すればよいのだが………彼は部屋にいても一向に返事をしないし、鍵をかけて閉じこもっているため、確かめる術は無いらしい。
暇潰しと称してやってくるそんな彼も彼で、何が楽しいのか。
やる事といったら……少しずつだが出来上がっていくドレスを数時間も眺める事と、サリッサとの他愛も無い短い会話だけ。
毎日毎日、それだけ。
だが彼は心底楽しそうに、子供の様にキラキラした笑顔を始終浮かべている。
他人がいるとどうしても仕事がはかどらないサリッサだったが、そこは、慣れ。
なんだか、彼がいるのが当たり前にさえ思えてきた。
ぎこちない会話しか出来ず、何処か他人行儀なサリッサも、次第に笑みを浮かべ、話す様になった。
………しかしやはり……下らない世間話の中に、彼個人の話題が入る事は無かった。
彼が以前言いかけた自己紹介も、どうやら続きは無いらしく、彼の名前は分からないままだった。
裸のマネキンに、淡いピンクの質の良い生地が巻かれてから更に数日。
マネキンは、ドレス…とはまだ言い難いが、それらしい形の衣服を纏う様になってきた。


