「やあ、エリザベス。君、そういえば結婚するんだったね。すっかり忘れて…」
「―――…お母様ぁぁぁ―!!」
…瞬間、サッと青ざめた彼女は踵を返し、大絶叫をあげながら部屋から出て行った。
……バタバタとお嬢様らしからぬ騒々しい足音を残しながら、彼女は階下へ降りて行く。
………よく分からない展開に呆然とするしかないサリッサの前で、男は軽快な足取りで開け放たれた扉へと向かって行った。
「…アハハ―、バレてしまったな。では、私はそろそろ部屋に戻るとするよ。説教は嫌いなのでね。お仕事頑張ってね、サリッサ」
「…………………………あ、はい……」
ヒラヒラと手を振る彼につられて振り返すサリッサ。
男の姿が無くなった室内でぼんやりとしていた彼女だったが、その数分後、物凄い形相でやって来た夫人に質問攻めを食らった。
その勢いがあまりにも怖かったため、サリッサは半分泣きながら対応せざる得なかった。
「それでは、仕立ての仕事や下らない世間話しかしていないのですね!」
「……はい……はい…奥様。…お…おっしゃる通り………仕立てと下らない世間話しか……しておりません……」
「どういう素性の者なのかなど、聞いておりませんね!」
「………はい!…はい奥様!………お…お…おっしゃる通り……!……どういう素性の者なのか……など……」
もはや、怯えきって答えが鸚鵡返しにしかなっていない。
聞きたい事を聞き終えたらしい夫人は、何故か憤然としながら部屋を後にした。
………側で見ていたお嬢様ことエリザベスは、半泣きで座り込むサリッサを心配そうに覗き込む。


