……サリッサ。
………教えた訳でもないのに、この男に初めて名前を呼ばれ……サリッサは石化した様に硬直した。
……冷や汗を流したまま微動だにしないサリッサを、彼は不思議そうに見下ろす。
「………あれ?サリッサという名前ではなかったかな?……違っていたならば申し訳無…」
「………いえ!……………サリッサ…です。………サリッサレム…です」
……言い様のない恥ずかしさのあまり、サリッサは俯いて次第に小さくなっていく。
そんな彼女の様子がなんだかおかしくて、男は笑みを漏らした。
「…そう言えば…自己紹介をしていなかったな。……すまないねサリッサ。では改めて。………私は…」
何処かの紳士の様に姿勢を正し、彼は微笑を浮かべて名を名乗ろうとした。
………と、同時に。
……部屋の扉が、勢いよく開け放たれた。
「ドレスのおおよそのデザインが決まったんですって?サリッサ、どんなのデザインなの?見せ…」
誰かから聞いて素っ飛んできたらしいお嬢様。
バックに花を散らしながら上機嫌で仕事部屋に入ってきた彼女だったが………。
………固まるサリッサの正面に立つ、実に爽やかな笑みを浮かべた青い髪の男を目にした途端、お嬢様もまた、固まった。
………奇妙な沈黙が漂うこの空間で、一人だけ………空気を読まない男。
唖然と佇むお嬢様に、彼は極自然に笑い掛けた。


