亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


しかも人が中途半端に描いて投げ捨てた恥ずかしい絵を、興味深げに眺めている。


………忽然と現われた男にサリッサは驚きのあまり硬直したが、一瞬で芽生えた激しい羞恥心に押され、サリッサは床一面に散乱する紙屑を大急ぎで回収しだした。

男が眺めていた紙も問答無用で奪い返し、そそくさと自分の荷袋に放り入れていった。


……そんなサリッサを男は不思議そうに眺める。

「………捨てるのかい?………………勿体無い…」

「………い、いえ………勿体無いなんて滅相も………………じゃなくて……捨てるとか捨てないとかいう話の前に………貴方は……一体……いつからそこに…!」

「……ん―……三十分程前からかな。ああ、私の存在は気にしないで。お仕事を続けて」

………そう言って男は足を組み、ニコニコと笑いながら椅子ごとサリッサに向き直ってきた。

………気にしないで、と言われても。気にしない方が無理だ。
人に見られながらの作業など、気が散って仕事にならない。

そもそもこの男が一体何者なのか、全く分からない。
呆然と佇むサリッサを前に、彼はこの部屋にしばらく居座る気なのか、立ち去る気配もなければポケットから棒付き飴を取り出して微笑みながら舐めている始末だ。


そんな彼は、呆然と見詰めるサリッサに「あ、いるかい?」と飴を勧めてきたが、サリッサは丁寧に断った。


「館の風景も人間も何もかも見飽きていて、毎日毎日退屈なのだよ。昨日の様にたまに部屋から抜け出してぶらぶらするのが暇潰しでね。…でもしばらくは、久し振りに面白いものが見れそうだ」

「………」



……毎日、暇?部屋から脱走?