昨夜考えていたドレスのデザインは約三十。
しかし、どれもしっくりこない。何度見直しても、これだというものはその中には存在しなかった。
それでも何か発想のきっかけになれば…と、もう一度パラパラと捲ってデザインを睨み付ける。
テーブルの上にはデザインも途中の羊皮紙と、紙屑が散乱している。
あの辺も念のためもう一度見てみようか…。
「淡いピンク…ピンク………鳥の羽をイメージ……は、止めておこう…」
「この花束のイメージは?綺麗だと思うけれど」
「いえ……花束は在り来たり過ぎて駄目。…テーマは決めない方がいいのかもしれない。………もっと自由に…」
「………自由に?………つまり、元からあるものを写生する風景画ではなく、想像のまま描く様な感じかな?」
「そう……そんな風に考えた方が固定観念に囚われる事も無いし……ただ、その分難し…………い……………………………………………」
………自分は今、誰と話しているのだろう。
……静かに口を閉ざしたサリッサは無表情のまま、何も描かれていない真っ白な紙から視線を外し、ゆっくりと………後ろを振り返った。
さっきまでは殺風景だった、室内。
その室内の、唯一と言っても過言では無いオブジェであった裸のマネキンの………隣りに…。
「この雪をイメージしたのはどうかな?綺麗だね―。あ、でもピンクなら色が合わないか」
クシャクシャに丸められた下書きを広げて見ている………昨日の……男の姿ではないか。
部屋の隅にあった筈の椅子にいつの間にか腰掛け、だらしなく背も垂れに寄り掛かってくつろいでいる。


