………なすがまま、サリッサは半ば引き摺られる様に手を引かれ、何度も瞬きを繰り返しながら男の後ろ姿を眺めていた。
…そう言えば、この人は誰なのだろう。
……見た目は、二十代くらい。
サラサラとした髪色は、あまりお目にかかれない、やや濃いマリンブルー。
男性とは思えない程色白で、きめ細かい肌で……綺麗で………羨ましい。
細身の背丈は遥かに高く、小柄な自分は見上げなければならない。
………館をよく知っている様だから、ここに住んでいるみたいだ。だが、ここで働いている召使…ではないみたいだし………むしろこの館の住人。
………しかし、旦那様と奥様には、お嬢様しかお子はいないと言っていた。
………では…この人は?
旦那様か奥様の客人…?
そんな事を考えている内に、二人は廊下の角を幾つも曲がったり階段を上がりし……「この辺でいい?」という男の声で、サリッサは今日何度目になるか分からないが、飛んでいた意識を呼び戻され、我に返った。
見回せばそこは……仕事部屋のすぐ側だった。
見慣れた廊下の景色に安堵し、繋いでいた手を離してサリッサは男に何度も頭を下げた。
「あ……ありがとう御座います。……ご迷惑をおかけしてしまって……」
「…ん?構わないよ?暇で暇で仕方無かったからね。なかなか面白かったよ」
………暇で暇で…?
よく分からなかったが、ニッコリと微笑む男に、サリッサもとにかく笑みを返した。
「それじゃ!誰かに見付かると厄介だからね。退散させて頂こうかな」
「………はぁ…」
そう言うと、彼は手をヒラヒラと振りながらスキップをして廊下の奥に消えていった。


