「…君の部屋は何処かな。途中まで送って上げようか?」
「………へ?」
……送る?そんな…滅相もない。
男からの突然の申し出に、サリッサは目を大きく見開いた。
「そ、そんな……送りだなんて…!独りで帰れま…」
「………本当に帰れるのかい?」
「……え……。………」
男の意味深な笑みを見たサリッサは………ふと、ぐるりと辺りを見回した。
………ここは……何処だろう。
いつの間にか自分は迷っていたらしい。
そして帰り道が…分からない。
………冷や汗を流したまま無言で佇むサリッサに、男は苦笑を浮かべた。
「……ほら、やっぱり迷っているじゃないか。この館に来てまだ二日なら、分からなくて当然だよ。………ここは館の北辺りかな。この更に奥に行くと分かれ道があってね、直進すると北の外れの塔があるよ」
「北の……塔………!?」
北側にある離れの塔と言えば、立ち入り禁止区域ではないか。そんな所の近くにまで自分はきてしまっていたのか…。
「で、部屋は何処?」
笑顔で覗き込んでくる男に、サリッサはビクビクしながら答える。
…こんなに近くで若い男性の顔を見るのは初めてだ。
しかも間近で見れば見るほど、男の美貌っぷりが分かる。
肩に届くか届かないかというくらいの青い髪が、サラサラと揺れていた。
「………確か………東の塔に行く前の廊下に面した部屋で………」
「……ああ………あの辺か。………いいよ、近くまで連れて行ってあげよう。おいで」
言うや否や、男はサリッサの手を掴んで歩き始めた。
突然の事に唖然とするサリッサ。
前を歩く男はなんだか楽しそうで、その様はまるで遠足に行く子供の様だ。


