………お互い、あまりこの状況が分かっていない。
ぽかんとしたままの二人は、数秒の間、馬鹿みたいにジッと見詰めあっていた。
その一向に進まない流れを先に戻したのは、何故か安堵した様に息を吐く目の前の男性だった。
「……………なんだ………見つかったかと思ったよ…びっくりした…」
「………すみ…ません」
何に対して謝っているのか自分でもよく分からなかったが、とにかく謝ってみるサリッサ。
目の前の彼はキョロキョロと慌ただしく辺りを見回した後、再びサリッサに向き直った。
「………今ならこの辺、誰もいない様だね……早いとこ戻っておこうかな。………君は誰だい?……どうやら私を知らないようだし?………ご夫妻のお客様?」
子供の様な、大きくて無邪気な瞳で見下ろされ、サリッサは頭を激しく左右に振った。
「い、いえ………違います!…あの……こちらで…雇われている者で…」
「……新しい女中さん?………どうりで見掛けない顔だと…」
「……いえ………商人です。………仕立ての依頼で……昨日からこちらに………」
こちらのお嬢様の花嫁衣装を作っている、と説明すると、男は顎に手を添えて納得した様に何度も頷いた。
「……ああ。そう言えばあの娘はもう結婚だったね。忘れてた。………君…仕立て屋なんだ。うん、それっぽいよね」
「………はぁ…」
…サリッサはとにかく相槌をうった。
もう仕事に戻らねばならない。奥様やお嬢様が部屋にいらしていたらどうしよう、と焦燥に駆られていた。
…そんなサリッサを察したのか、男は何故か、実に爽やかな笑みを向けてきた。


