亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

……広いテーブルのおよそ三分の一は、丸められた紙屑で埋まっているが……サリッサは気にも止めず、ぼんやりとしながら仕事部屋から出ていった。




床には永遠と続く厚い絨毯、天井に幾つも並ぶ小さなシャンデリア、一枚一枚異なるステンドグラスの窓、その先にちらつく純白の雪景色。

部屋から出ただけで、まるで絵画の様な美しい景色がそこには広がっている。

このデイファレトの、奥深い美術史の産物が、細部に至るまで施されている。











………綺麗。














芸術は、終わりの無い夢物語。

生み出しても、生み出しても………追及し続けるしかない、底の無い学問。



芸術家とは、死ぬまでこの芸術にとりつかれ、探求し続ける、一種の学者。




(………わぁ………いつの時代の様式かしら…)

……一歩進む度に、美しい芸術が目に入ってくる。
初めて見る模様もたくさんあり、サリッサはその都度足を止めて魅入った。





ただひたすら直線が続いていた廊下は、ようやく現われた角を曲がると、その先は複雑に入れ込んだ廊下だった。

…玄関から仕事部屋までの道程しか知らないサリッサは、それ以外の道に足を踏み入れれば、迷う事は明らかだったのだが………夢見る乙女の様に目を輝かせて芸術に魅入る彼女は、あても無い道をどんどん進んで行った。













………もう既に、館のどの辺りにいるのか絶対に分かっていないサリッサは、軽快な足取りで、何個目になるか分からない角を曲がった。



斜め上を見上げていたサリッサ。

……当然、曲がった先の目前にある人影など、気付く筈もなかった。