「館内は好きな様に歩いても構わないわ。気晴しの散歩がてらにとか」
「………はい…」
………気晴し……にはならないだろう。
多分、見て回ったら………一日中夢中になって、仕事なんか手に付かない。
………だってこの館……どこもかしこも素敵な、珍しいデザインなんだもの!
本当は見て回りたくて仕方無いのだが……サリッサ、今は仕事中よ…と己を諫め、なんとか耐える。
すると、お嬢様は何か思い出した様に手を叩いた。
「お父様とお母様からもう聞いたかしら?館内は好きに歩いて良いけれど、行ってはいけない場所があるの!」
「いえ……存じません…」
何か言われた気もするが、生憎、記憶が無い。………どうしようもないなぁ。
お嬢様は部屋の窓に駆け寄り、吹雪きに塗れた外のある方向に向かって指差した。
「あれよ。見えるかしら。……この館の北側に塔があるの。二階の渡り廊下からしかいけないのだけどね。あの塔には、許された人しか出入り出来ないから、気を付けてね」
………何故、近寄ってはいけないのか。その理由は教えてもらえなかった。
…そうか、あそこには近寄ってはいけないのか。
特に興味が引かれる事も無く、サリッサはただ単純にそう理解した。
「色はどう致しますか?古典的デザインですと、白か黒ですが…」
「別の色が良いわ!花嫁衣装って聞いた話によると、国によって違うのね!真っ赤だったり、真っ黄色だったりするそうね。びっくりしちゃったわ。でも、どうせなら白黒以外の色がいいわ!」
「…フフッ…畏まりました」


