こくりと頷いたのは、無意識の私で、貧しさに負けていた私だった。
普段、仕事は自分の家で独りせっせと行っているのだが、その依頼内容は、依頼人である貴族様の館で行う事が条件付けられていた。
奥様が、娘の花嫁衣装が出来上がっていく様を見たいのだと言っているそうだ。必要な生地あらば、全てあちらが用意してくれるとか。
サリッサの家近くから館までは送迎までしてくれるのだという。
………送迎。………送迎、だなんて…。
…どこぞのお姫様にでもなった気分だ。
あんな摩訶不思議な乗り物に乗っていいのだろうか。
自分が乗る事で急に動かなくなったりしないだろうか。
………ああ……というか、どうやって乗るんだったっけ。………混乱してきた。
「………貴族様から直々に依頼なんだもの。………生半可な仕事は出来ないわ……。………ああ……これって夢じゃないかしら…?」
「……夢である筈が無いでしょう…こんなお金を前にして………。…自信を持ちなさい、サリッサ。………お客様に似合う、お客様が喜ばれる、最高のドレスを作りなさいな。大丈夫よ………貴女はそれだけの力を持っているもの…」
頭を抱えて悩みに悩む我が娘を眺め、母は苦笑した。
仕事は明日からでも…と言われた。
早朝、あちらから迎えが来るらしい。
どうしよう………迎えの時間まで、まだ二十四時間以上もあるのに………もう手が震えてきた。
………これじゃあ薪を取りに行けないわ…。


