夜が明けたら、薪を調達しにいこう。
…仕事は無くとも、やるべき事は沢山ある。どれ位必要かな、雪があまり積もっていなければいいけど……。
そんな事を考えながら毛布にくるまり、床に就いたその、翌日…。
夜が明ける、少し前。
薪を調達すべく、サリッサはマントを羽織り、すっかり使い古して手に馴染んだナイフを懐に入れていた。
……室内は外と変わらぬ程寒く、吐息は濃い純白だった。
母はまだ眠っている。横たわる細い身体に自分の毛布を掛けてやり、サリッサは出入り口の扉に歩み寄った。
錆だらけの把手に手を掛け、押し開けようとした時だった。
………目の前の扉から、コンコン…という単調な乾いた音が聞こえた。
(………?)
………ノック、されているのだ。
こんな時間に…一体誰だろう。
近頃、貴族を標的として街を荒らし回っている質の悪い賊がいると聞く。
………こんなボロ小屋が狙われるなどまずないと思うが……。
………思うが…。
「………………どなたですか……?」
懐のナイフをギュッと握り締め、不安げな表情でサリッサは扉に向かって言った。
「こちら、サリッサという方がおられる仕立て屋であるとお聞き致しましたが、間違ないでしょうか。………我が主人から、仕立ての依頼を言付かっております」
怪訝な表情を浮かべ、意を決して開け放った扉の外には、上等な服で身を包んだ老人が一人、佇んでいた。
……老人は、サリッサ親子が今現在止どまっているこの街の、貴族の屋敷からの使いだった。


