亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~





商人にとって、この引っ込み思案な性格は邪魔なだけだ。何事も積極的に、活発にいくのが商人というもの。



腕の良い几帳面な仕立て屋の父は、いつもサリッサにそう言って叱っていたが、今はもう、そのお説教を聞くことは出来ない。


数年前に病気で父が亡くなってからは、母と二人三脚で生活している。

生活は厳しかったが、食べていけるくらいのお金は稼げたし、仕事の数をこなせばこなす程、仕立ての腕が上達していくのが嬉しかった。





頑張ってきた。



母と二人で。

亡くなった父の変わった癖や、ドジな話を思い出して笑い合いながら。
















………だが…。





















「……お母さん、ただいま。………お薬はのんだの?」




……商売をする期間だけ借りている、ボロボロの借家に帰ってきたサリッサは、被った雪を払い除けながら、部屋の奥に向かって話し掛けた。



暖かい暖炉の側には、この借家に唯一存在する古びたベッドが一つ。

そこに横たわるのは、雪の様に真っ白な…透けてしまう様な肌の、華奢な女性……サリッサの母だった。




母もまた、この街に来た時に病に倒れ、伏せてしまった。
父と、同じ病だった。
幸い、症状は軽かったが、いつ悪化してもおかしくはなかった。



「…ええ。………ちゃんとのみましたもの。………サリッサ、マントは干してこっちにいらっしゃい。………身体を温めないと…」

弱々しい、儚げな微笑を浮かべる母。
雪で冷たく湿ってしまったマントを椅子に掛け、サリッサは暖炉の前に歩み寄った。