サリッサは、商人の一人娘だった。
商人とは、色々な街を転々とする、家無き者。
生きていく上で必要なお金は、日々の売上で決まる。
売り物は、食糧から衣服、ナイフ等の武具や装飾品と、実に様々だが、サリッサの家は衣類を売っていた。
毛皮、なめし革などを扱う別の商人から皮や羽毛を買い取り、それを元にコートやマント等の類を作っては売っていた。
時には客からの依頼で服を仕立てあげたりして、稼いでいた。
サリッサの仕立てた服は男女問わずなかなか評判が良く、どの街に行っても必ず仕立ての依頼が殺到した。
彼女の作るコートは防寒に優れ、丈夫で、デザインもいい。
ドレスは実に華やかで、限られた素材で作られているにも関わらず上等だ。
稀に貴族様も、貧乏な商人風情のサリッサの名を何処から聞き付けたのかは知らないが、豪勢な衣服に身を包んだ使者を送ってくるのだ。
あんなのがいい。こんな風にしてほしい。
要求は様々だが、サリッサは全ての願いに応えた。
作る前に依頼人の採寸をするのだが、貴族に依頼された時はとても緊張する。
重苦しい門を潜って中に入る度に、おどおどしなければならない。
みすぼらしい格好でこんな所に出入りしていいのか。
靴底の汚れはちゃんと落としただろうか。
マントは持っている中で一番上等なものを選んできたけれど、穴なんか空いてないだろうか。
恥ずかしい。
恥ずかしくて堪らない。
眩しい世界の中で、私は必然的に浮いている。
どうしようも無く、恥ずかしい。
逃げてしまいたい…。


