あえて同等の立場を貫くつもりのアレクセイは、誰かさんの舌打ちを無視し、やんわりとした口調で挨拶を述べ始めた。
「―――………偉大なる第2大国バリアン王…………まず最初に……この様な、我が国の勝手な振る舞いに貴重な時間を割いて頂きまして、本に恐縮…痛み入ります。………我等は、第3大国フェンネル王54世から遣わされました使者一行。…私はその長である、アレクセイ=リドム…と申します」
「………ふん……堅苦しい挨拶は終わりか?………早く本題に入ったらどうじゃ……」
…慎重に言葉を選んだ挨拶は即、軽く撥ね付けられたが……アレクセイは顔を少し上げて笑みを浮かべた。
「………これはこれは…話の早いことですな。…では、本題に移りましょう。……その前に一つ…お訊きしたい事が御座います」
本題の前に図々しくも質問があると言ってみた。
……案の定、玉座に腰掛けるお偉い老人は、思い切り顔をしかめた。
「………本題以外の話じゃと?……聞かん!……貴様らの言う通り、わしは貴重な時間を割いておるのじゃぞ!……その上無駄話まで持ち掛けるとは!……この無礼…」
「こちらの領土に入った際ですが……」
憤慨する老王の言葉を、なんとアレクセイは何食わぬ顔で遮り、勝手に話を進め出した。
………無礼極まりない。
ただでさえ短気な老王はブルブルと握り拳を震わせ、目下の老紳士に罵倒を浴びせようと口を開こうとした。
……が。
「………大きな、奇妙な動物の群に我等総員…襲われまして。………砂漠の中頃にまで来ていた時で御座いました。………その時…案内役の者は忽然と姿を消しておりました…」


