亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

―――熱風が熱風を切り裂いていく。


…地平線の彼方を見据えていた赤い風は、獲物を狙うかの様な鋭い蒼眼をぎょろつかせ……。



―――………目下の、単色のキャンパスにポツリポツリとある、点の様なものを捉えた。


はっきりと瞳の真ん中に映すや否や、翼を翻して旋回を始めた。



捉えた獲物の遥か頭上を飛び、空中で静止する。




















「―――…あれか…」

赤い鳥の背に跨がった男は、目下の標的を見下ろして呟いた。
男は真っ赤な長いマントを羽織り、日を避けるためのフードを深く被っている。
風に靡くマントの内側に、フック型の装飾が施されたナイフが見え隠れしていた。



………その後ろから、また別の赤い鳥が追いかけて来た。
その背中にも同じ身なりの男が跨がり、手綱をとっている。



「………………あれだな…」

「……おっしゃられていた通りだ…」

「………まさか……本当に来るとはな…。………至急、報告だ。…一旦戻るぞ…」

そう言って、二人の男は手綱を引き、巨大な鳥の脇腹を軽く蹴った。


鳥は奇怪な鳴き声をあげ、グルリと向きを変えて翼をはためかせた。



指示された方向へと、一直線に飛び進む。




男はもう一度だけ、目下の標的に視線を移し……。







………顔をしかめて、呟いた。




















「…………………………異端者め………」