一本は身体を反らして避け、一本は瞬時に伸ばした爪で弾き飛ばした。
リストも構えていた短剣で氷の矢を勢いよく縦に裂き、他はマントで衝撃を吸収させて弾いた。
「―――洒落臭い!!」
苛立ちながら叫ぶイブは、顔面目掛けて飛んできた矢を寸前で避けた直後、そのまま噛み付いて矢を受け止め、冷たいそれを掴むや否や、殺気の根源に向かって勢いよく投げ付けた。
氷の矢は行きと同じ速さで、主人の元へと帰って行く。
「―――っ!?」
再び次の矢を放とうと構えていた弓に、イブの投げた矢が突き刺さり、その狩人は一瞬怯んだ。
この隙を、逃す訳にはいかない。
「撤っ退!!」
はい、急ぐよ!、とイブはくるりと踵を返し、リストのマントを引っ掴んでその場から逃走した。
急な展開に頭が追い付かず、リストはイブに引っ張られるまま走った。半ば引き摺られる様に。
「…お、おい!?ちょっと待て!!そっちは…!」
そっちは……。
物凄い速さで走るイブが向かう先は…………………谷。
さっき跳び越えた谷。
恐ろしく深い、暗い谷。
………このまままっすぐ行けばその谷。全容はばっちり見えている。だからイブにも分かっている筈。
だが。
彼女は一向にそのスピードを、緩めない。
谷を跳び越えるのか、それともやはり………。
「あああああああ!?」
谷の縁で勢いを付ける事も無く、跳躍しようという気配も無く……………イブはそのまま、重力に従って谷に身を投げた。
不本意ながら道連れとなったリストは、絶叫した。


