白昼堂々殺気なんかぶつけてくるとはいい度胸だ。
加えて非常識も甚だしい。
(ああそうだった。…………ここは常識が通じない国なんだっけ?)
ふん、とイブは嘲笑を浮かべ、闘争心の湧き上がりと同時に生え始めた牙をぺろりと舐めた。
………活きのいい殺気だ。心地良い。………血がたぎる………けれど……。
(………闘争より、逃走しないとね―……)
………重役として密かに潜入した身だ。ここで無駄に暴れてはいけない。
……ジリッ…と僅かに足を動かし、ゆっくりと屈んだ。
こちらが動くのが先か。
それとも向こうが…。
―――、刹那。
「一時の方向!!」
瞬時に、向けられた殺気の位置を感知し、イブは僅かに身体を捻った。
……途端、イブの細い首筋の数ミリ横を、鋭利な閃光が駆け抜けた。
イブの肌を傷付ける事無く通り過ぎ、積雪に突き刺さったのは………氷の、矢。
―――狩人だ。
しかし、ぼんやりとしている暇など二人には無かった。
この矢が放たれた方向から、第二波の攻撃が間を空ける事無く飛来してきた。
…今度は一本ではない。
四、五本の、狂いの無い光りの如き矢が、二人目掛けてまっすぐ伸びてきた。
到底、普通の人間の目では追い付けない速度だが、二人は例外だ。
二人の額には反射的に、第三の目が瞼を開いた。
揺れる前髪の下から覗く赤い瞳はギョロギョロと蠢き、飛来する矢の速度、位置、高さをあっという間に見極めた。
視神経から得た情報は頭と運動神経に同時に伝わり、身体を動かした。


