掘っても掘っても白しか出て来ない足元の雪を蹴散らしながら、イブは目を皿の様にして罠の有無を見極める。
………うん、やはりもう無い様だ。
リストの様な不幸な目には会いたくない。
絶対。
よっこらせ、と腰を上げ、リストを置いて意気揚々と歩を進めた。
―――が、すらりとしたイブの、前に出されようとした足が………………雪路に触れる寸前、ピタリと静止した。
……突如、石像の如く固まったイブ。
しかし気の強そうなその瞳は、鋭い光を宿したまま周囲を窺う様に左右に泳ぐ。
本の数秒遅れて、背後のリストも急に身を強張らせた。
―――………人数は何人と思う―?
―――……一人………いや、二人…?………………何処だ?……だいぶ距離がある…。
―――…この森の磁気のせいかな…?……なんか方角が分かんないな―…。
“闇溶け”の応用である、闇を通しての思念伝達。頭の中で、二人はポツリポツリと会話をしていた。
イブとリストは微動だにしないまま、視覚と聴覚をフル回転させ、周囲の様子を探る。
―――………殺気だ。
罠とは違う、そこに主のいるピリピリとした殺気。
生々しい、空気。
何処?
何処からこの突き刺す様な視線は注がれている?
距離感、位置共々、うまく感じ取れない。
………厄介な土地だ。
こういう時、『理の者』であるダリルの力があれば、幾分楽なのだが。


