どうやら、今噛んでいるこの長い刃が最後の飛来物だったらしい。
刃の嵐は嘘の様に止んでおり、リストの足元には弾かれたナイフが虚しく散乱していた。
………噛んでいた刃を地面に落とし、ゼエゼエと激しく呼吸を繰り返すリスト。
冗談では無く、なんだか本当に死にそうだった、死神が見えた気がした、そんな息も絶え絶えな彼の傍らに、何処にいたのか………腹を抱えて爆笑するイブが降り立った。
「…お疲れ~」
「おおおおおおお前ぇぇぇぇ―!!」
もう、言葉では言い表せない怒りを叫びに変え、全く被害にあっていないイブを心の底から恨み、睨み付けた。
「ヘッ、何よ~?……誰かさんが罠に気付いて無いみたいだったから―?この慈愛の女神、イブちゃんが忠告してあげようと思ったのに、あんた、断るんだもん。…にしてもさっきの必死の顔といったら………………ニャハッ!!ア―ハッハッハッハッハッハッハッハ!!ニャハハハハハハハ!!アンコール―アンコール―」
「よし。お前、そこを動くな…」
足元に転がるナイフの一つを掴み、凄まじい殺気を纏いながらゆら―りとイブに歩み寄った。
…が、イブはヒラリとその場から跳躍し、高い針葉樹林の枝に飛び移った。
「八つ当たり―!!大人気ないなぁリスト君~アハハハハハハハハ!!」
ブンブン枝を揺らし、積もった雪を掴んでリストに向かって投げた。
………ハラハラと降り懸かってくる雪で白髪になっていくリスト。何処に矛先を向けていいのか分からない激しい怒りを堪えつつ、わなわなと震える手でナイフを深雪にぶっ刺した。


