亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




(………)










……フェンネルの使者として、アレクセイと共に抜擢された兵士は………この、異様な程厳重な守りが敷かれている謁見の間に、絶句した。



………確かに。

…確かに、この歴史に残るであろう隣国との国交に対して、戦争大国バリアンは警戒してくる、とは………思って…いたが。



(………いくらなんでもこれは………厳重すぎやしないか……)

箱の中にびっしりと詰め合わせた様に、四方八方、隅から隅に、武装した兵士が配置されている。



………これはバリアンの、我が国に対する反抗意識の現れなのか、力の強大さを示しているのか、それとも………。


兵士はふと、母国の城の、謁見の間の景色を思い浮かべた。





………うん。………我が国の謁見の間は………ここと比べると随分すっきりしている。


………我が王…フェンネル王54世は、兵士を厳重に、すぐ近くに配置するのが嫌いらしい。















アレクセイを筆頭とする一行は、そのまま謁見の間に通され、唯一ぽっかりと空いている中央に誘導された。



……音という音の存在が許されない様な静寂の中で、アレクセイ達の足音だけが孤立して響き渡った。










先頭のアレクセイだけが一歩、玉座の前に進んだ。



踵を揃え、行儀良く姿勢を正した。
微動だにしない玉座の上のバリアン王にちらりと視線を移し、アレクセイは「私が代表して…」と言って軽く頭を下げた。



………深々と、ではない。





…その軽い挨拶が、バリアン王はお気に召さなかったのか………頭上から小さな舌打ちが聞こえた。