亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


あまりいい思い出の無い、甲高い音。


それがリストの鼓膜を叩き、一秒足らずの間を空けて………。














………空虚な殺気へと、変わった。

野獣フェーラの血が半分通った、人並み外れた五感のリストの身体がぶるりと震えた。

……研ぎ澄まされた反射神経はいち早く殺気の位置を感じ取り、半ば無意識で前方に転がり込んだ。






砂漠に似た滑らかな積雪の表面を荒らしたリスト。


―――その直後、つい今まで彼が屈んでいた場所に………………上空から、冷たい刃の群れが集中豪雨の如き勢いで一気に突き刺さった。



……深々と垂直に突き刺さった、柄の無い刃。十数本はあるであろう長い刃は、妖しい光沢を放ち、血を吸いたい…とでも言うかの様に、その刀身に物欲しげな様子でリストを映していた。














え、何、今の。

自分、串刺しになる所だった?
串刺しって言うか蜂の巣になる所だった?






……ぶわっと、冷や汗が噴き出す。




様々な疑問や、「存命―、存命―」という己の生存確認をする声が頭の中で木霊したが、それも束の間。

落ち着くとか状況判断するとか、そこまで頭がいっていない困惑する意識の側で、再び警鐘が鳴り響いた。






それから僅か二、三秒後………数分前まで、この塔に来るまでイブと歩いて来た、谷を隔てた森から…………………………………………刃の嵐が、真横に振って……いや、突貫してきた。

一寸の狂いも無く、こっちに。






心中で無言の悲鳴を上げながら、リストは物凄い速さでマントの内から短剣を掴み、向かって来た刃の嵐をただただ無心で弾き返した。