あまりいい思い出の無い、甲高い音。
それがリストの鼓膜を叩き、一秒足らずの間を空けて………。
………空虚な殺気へと、変わった。
野獣フェーラの血が半分通った、人並み外れた五感のリストの身体がぶるりと震えた。
……研ぎ澄まされた反射神経はいち早く殺気の位置を感じ取り、半ば無意識で前方に転がり込んだ。
砂漠に似た滑らかな積雪の表面を荒らしたリスト。
―――その直後、つい今まで彼が屈んでいた場所に………………上空から、冷たい刃の群れが集中豪雨の如き勢いで一気に突き刺さった。
……深々と垂直に突き刺さった、柄の無い刃。十数本はあるであろう長い刃は、妖しい光沢を放ち、血を吸いたい…とでも言うかの様に、その刀身に物欲しげな様子でリストを映していた。
え、何、今の。
自分、串刺しになる所だった?
串刺しって言うか蜂の巣になる所だった?
……ぶわっと、冷や汗が噴き出す。
様々な疑問や、「存命―、存命―」という己の生存確認をする声が頭の中で木霊したが、それも束の間。
落ち着くとか状況判断するとか、そこまで頭がいっていない困惑する意識の側で、再び警鐘が鳴り響いた。
それから僅か二、三秒後………数分前まで、この塔に来るまでイブと歩いて来た、谷を隔てた森から…………………………………………刃の嵐が、真横に振って……いや、突貫してきた。
一寸の狂いも無く、こっちに。
心中で無言の悲鳴を上げながら、リストは物凄い速さでマントの内から短剣を掴み、向かって来た刃の嵐をただただ無心で弾き返した。


