……少し距離があるせいで臭いが分からない。………血の臭いか?
………何気無く、リストは更に体勢を低くし、一点の赤い染みにそっと手を伸ばした。
伸ばした方とは反対側の手は積雪にめり込み、身体を前へ傾けると同時に、その手に体重がかかっていく。
真っ赤な一点に、リストの指先が触れるか触れないか………爪の辺りに雪の冷たさを感じる……。
…その、直前だった。
―――ビィィンッ
………何だか聞き覚えのある音が、一瞬だが、聞こえた。
………あれだ。
ルウナ様が不慣れな手付きで、種か何かを付けたパチンコをアレクセイに向けて放つ時の音。
何故か必ず顎に当たるので、調子に乗って更に放ってみる音。
ただ歩いているだけの、何の罪も無い、これからも罪を犯す気など無い自分に、何の前触れも無くジンが「手元が狂いました」とかほざいて慈悲の無い鞭を振ってくる時の、忌々しいあの音。
その辺の音に似ている。全く同じでは無いが、よく似ている。


