「………さっきカイが言っていたのだけどね………………魔力を注ごうとすると、何故か…跳ね返って来るらしい。………デイファレト自体が、外からの侵入を拒むかの様に、ね…」

「………………魔の者二人分の魔力を易々と撥ね付ける程の………強い魔力に覆われているという事ですか、兄上…」

しばし考えた末、冷静に導き出したリイザの答えに、アイラは微笑を浮かべた。

「………………だろうね。………特に、城がある辺りを探ろうとすると…反発する魔力が強過ぎて、下手をすると怪我をする。………………あの国の孤城には、何かある様だね……。………いや、何か………いるのかな?………フフッ…見れないのが残念だ…」




残念、残念だ、と連呼する割りには、随分と楽しそうなアイラ。

このところ、彼の機嫌はすこぶる良い様だ。



「………兄上、父上は…フェンネルに使者を送ったのでしょうか…」

「…情報を仕入れるのが早いな、リイザ。私に似て、相変わらずの好奇心と地獄耳な事だ。………ああ。送った様だ。…正しくは父上ではなく、ケインツェルがな。………ゼオス等の兵士も今朝発ったらしい…」







さて。

最早、疑いの目しか向けられていないフェンネルの女王陛下は……一体どんな対応をしてくれるのか。


デイファレトに送られた兵士は徐々に勢いをつけている。標的の王族も、いつまで隠れていられる事か。
………時間の問題だ。




「………リイザ…」

「…はい、兄上」

「………………………………お前も、楽しいのかな…?」


…ニンマリと口元を歪めるアイラの隣りで、鏡の己を見詰めながら、リイザは………目を細めた。








「はい、兄上」