フフッ…と思い出し笑いを漏らすアイラ。

対するリイザはただ静かに首を左右に振った。

「滅相も御座いません、兄上。………こいつの力が貧弱だっただけの事…」

「………使えないだのと罵って、また殴ったのだろう?………ログはお前の所有物だから、どうしようとお前の勝手だが………それも一応は女だ。女を殴るのは少々、いただけないな。………その内愛想を尽かれても知らないよ。………カイ、ログにきちんと謝れ」


主人であるアイラがそう言うと、カイはパッと杖を立て、隣りに佇む頭一個分小さいログに軽く頭を下げた。



………しかし、そのカイの笑みは、反省する気などさらさら無いとでも言うかの様に、妙に爽やかだった。



………横目でカイを見上げていたログは、その意地の悪い態度に、微かに眉をひそめた。



「………………にしても……一向に何も映らないな。………………………デイファレトの光景は……」







父や家臣等の目を盗み、ひっそりと…いや、ある意味堂々と裏で行動する二人の兄弟は、今騒動の渦中となっているデイファレトの様子を、高見の見物とでも言うかの様に魔の者を使って探っていた。


…何の刺激も無いこの城での唯一の楽しみは、老王の政の検討や、他国での騒動の覗き見である。


本の少し前まで隣国は内紛が激化し、見物だったのだが………王政復古してからはそんな面白いものも見れなくなった。



そして今回も同様に、デイファレトの様子をこうやって探ろうと考えていたのだが………何故か、それが出来ない。



魔の者二人がかりでやっても、鏡には何の景色も映らない。