やけにピリピリと波打つ、沈黙を守る空気の中。
……一人の兵士が群れの中から玉座の手前にまで駆け寄り、ケインツェルに何やらボソボソと耳打ちした。
……瞬間、にんまりと微笑むケインツェル。
軽快な足取りで玉座への階段を上り、震える老王に笑顔で言った。
「―――参られたそうですよ…例の集団が。………扉の前で大人しく控えている様ですが……?………フフフフフ!」
…苛立たせる側近の含み笑いも今や老王には聞こえていないのか………彼の顔は真っ青だった。
…老王のわななく唇は言葉を発する気配も無く、ただただ乾燥する一方で震えていたが………ケインツェルがその細い手で軽くはたいた途端、老王はビクリと大きく震えて我に帰った。
「―――……と………通せ…!…………………………扉を開けよ…」
物凄く嫌そうに顔を引きつらせながら指示すると、数人の兵士が巨大な扉に手を掛け、ゆっくりと………開けていった。
―――ゴゴゴ……と重苦しい音を立てながら、扉は左右に腕を開いていく。
…徐々に大きく、広がっていく扉の隙間から、兵士に囲まれた異端者達の姿が見えてきた。
「………」
ゴクリ、と唾を飲み込む微かな音が、玉座辺りから聞こえた。
…ケインツェルはこんな時でも、ニヤニヤしっぱなしだ。………こんな時だから尚更か。
リイザは……相変わらず無表情だ。魔の者のログはその背後で大人しく杖を抱いている。
………そんな周りの状況をチラチラと観察しながら………アイラは肘掛けに頬杖を突き、ケインツェル程ではないが面白そうに使者達を眺めた。
………さて、どうなるかな。


