亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

その傍らで見守っていた兵士は、ウルガの判断に不服の声を漏らした。


「……しかし………ウルガ様…」

…途端、狼の様な…有無を言わせない静かな眼光が、兵士を射抜いた。


「………分からぬか?これだから…バリアンの人間は好戦的だとか…殺し好きだとか悪態を吐かれるのだ。………我々は断じてその様な民ではなかろう。………忠誠故の行いだ…………理解したならその口、閉じよ」

「………」

グッと押し黙る兵士。彼の額には冷や汗が浮かんでいた。

ウルガはすぐにアレクセイに向き直り………静かに口を開いた。


「………貴様らの意図など…知った事ではない。国交と称して隠した刃をこちらに向けようが、何だろうが…………構わん。……………しかし………我が王には、我等…そして魔の者がいることを忘れるな。………ここでは貴様らの力など、無力に過ぎん…」


「…………ご忠告、有り難う御座います」

………軽く遠回しに脅されたが、アレクセイは苦笑しただけだった。


他の所持物や、アレクセイ以外の使者達の確認をすべきだったが、ウルガはそれらを全て省かせ、早々に謁見の間へと案内させた。


…武器の所持だけで、それ以外はろくに確認もせず、速やかに城内に通してしまった。
廊下を歩いて行く使者達の後ろ姿を見詰めながら、狼狽する数人の兵士がウルガに囁く。

「……よろしかったのですか?………王には、厳重にと命令が…」

「………良い。………王はそうおっしゃられたが………側近のケインツェル様と王子からは………軽く、と命じられた。………臆しているのは、王だけだ…」