―――ビクン、と…ユノの身体が震えた。
魔方陣の光を頭上に浴びた彼は、いつの間にか痛みに耐える悲鳴も止み、あんなに震えていた身体も嘘の様に大人しくなっていた。
………しかし、染まった瞳の赤は消えない。
「………」
ユノは目を覆っていた両手をゆっくりと下ろし、その赤い虚ろな目を大きく見開きながら、頭上の魔方陣を見上げた。
………薄く口を開いたまま、瞬きもせずにぼんやりと上を向くその姿は、確かにユノ本人なのだが………まるで抜け殻の様だ。
何が起きているのか。
この渦中のユノ以外、全く現状把握出来ずにいた。
サリッサは微動だにしない我が子を酷く心配そうに見詰めたまま、時折おろおろと目を泳がせる。
ザイは怪訝な表情で、魔方陣とユノを交互に見詰めていた。
レトはただ……異常な程冷たい彼の力無い手を、両手で握り締めていた。
こうすれば………彼をつなぎ止めておく事が出来る気がした。
ユノはここにいるが、今…ここにはいない。
……自分でも訳が分からないけれど、そんな気がして……握り締める手に、力を込めた。
………不意に……彼の薄く開いた唇が、本の少しだけ開いた。
傍らのレトは、それを見逃さなかった。
彼の唇はゆっくりと開かれ………突如、言の葉を綴り出した。
『―――………は……』
「………あ…」
ユノ、ともう一度彼の名を呼ぼうとした声は……舌の上で止まった。
何か……おかしい。


