亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




―――ビクン、と…ユノの身体が震えた。



魔方陣の光を頭上に浴びた彼は、いつの間にか痛みに耐える悲鳴も止み、あんなに震えていた身体も嘘の様に大人しくなっていた。


………しかし、染まった瞳の赤は消えない。












「………」





ユノは目を覆っていた両手をゆっくりと下ろし、その赤い虚ろな目を大きく見開きながら、頭上の魔方陣を見上げた。


………薄く口を開いたまま、瞬きもせずにぼんやりと上を向くその姿は、確かにユノ本人なのだが………まるで抜け殻の様だ。





何が起きているのか。

この渦中のユノ以外、全く現状把握出来ずにいた。

サリッサは微動だにしない我が子を酷く心配そうに見詰めたまま、時折おろおろと目を泳がせる。

ザイは怪訝な表情で、魔方陣とユノを交互に見詰めていた。






レトはただ……異常な程冷たい彼の力無い手を、両手で握り締めていた。




こうすれば………彼をつなぎ止めておく事が出来る気がした。


ユノはここにいるが、今…ここにはいない。




……自分でも訳が分からないけれど、そんな気がして……握り締める手に、力を込めた。






















………不意に……彼の薄く開いた唇が、本の少しだけ開いた。



傍らのレトは、それを見逃さなかった。


彼の唇はゆっくりと開かれ………突如、言の葉を綴り出した。




















『―――………は……』



「………あ…」


ユノ、ともう一度彼の名を呼ぼうとした声は……舌の上で止まった。





何か……おかしい。