亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

佇んだまま微動だにしなかったユノは、レトが振り返った時には頭を抱えて床に膝を突いていた。


小刻みに全身を震わせ、その華奢な身体で懸命に呼吸を繰り返している。

暑い筈の無い、純白の吐息が漂う極寒の空気の中で、彼だけが大粒の珠の様な汗を流していた。



「……………ぁ………っ………」

心配そうに伸ばしてくるサリッサの手を振り払い、微かな声を漏らしながら、今度は両手で両目を覆った。



すぐさま近寄り、レトは正面から彼を覗き込んだ。

「………どうしたの……ユノ…ユノ……」

「………っ…………はっ……離れて………!……」



グッと肩を押され、数歩後退した途端………ユノの、顔を覆った手の指の隙間から………………真っ赤に染まった彼の瞳が見えた。



透き通るそれは暁の如き光を帯び、奥底でぼんやりと光った。















「―――!?」

「―――…氷が…!?」



両目を押さえて蹲ってしまったユノを中心に、突如………冷たい床が凍て付いた。
じわじわと広がっていく水溜まりの様に、薄い氷の膜が彼を囲む様に張っていく。



……半透明の氷の波紋はレト達の足元に広がり、越えて行き、壁一面にまで浸蝕していった。


パキパキという甲高い音色を奏でるその静かな氷の波は、光り輝く天井まで達し、細く長い氷柱をあっという間に垂れ流していく。









―――……この光景は…少し前にも目にした。


…洞穴で見た、あの………。







「………白の魔術が………」

どうすればいいのか分からず困惑しながら、サリッサは呟いた。

「これが………白の魔術……」