確かに、いくら目を凝らしても、見る角度を変えたりしても、ユノ以外誰も読めなかった。
困惑しながら天井を見上げるサリッサに、ザイは怪訝な表情で声を掛けた。
「………サリッサ殿は読めないのですか?」
「え………ええ。………………さっぱりです。………私自身には王族の血は流れておりませんから………」
会話する大人二人の傍らで、ぼんやりと文字の群れを見上げていたレトに、満面の笑みのユノが意気揚々と小突いてきた。
「凄いだろう!読めないだろ!…でも、僕には読めるよ!!」
「………うん………全然読めない。…………………………僕、勉強してないから………文字って読めないんだ………」
「………なんか、自慢した気になれないな……」
あ、そう……、とちょっとテンションが下がったユノは、再度天井を見上げた。
……繰り返しその文章を読んだが………他には何も書かれていない様だった。
………この後はどうなるのか。
まさか、何も無く終るのではないか。
「………………何も起き…」
「ザイ、黙ってよ」
「………何か足りな…」
「お母様、うるさいよ!皆ちょっとうるさい!!黙ってって言ったら黙って…」
「何も無いね」
「………………レト、それ禁句ね」
辛抱強く、半ばユノ王子の強制で何かしら待ち続ける一向。
その足元で暗がりに塗れながら、アルバスはヨチヨチと部屋の探索をしていた。
最後にいつ火が点され、消えたのか全く分からない蝋燭に近寄り、その細長い輪郭に向かって「チチッ」と話し掛けていた。


