亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




屈んだ拍子に、肩に掛けていた荷袋にぶら下がるランプが床に横倒しになった。

部屋の隅の方でなりふり構わず歌っていたアルバスが、その小さな明かりに興味を引かれたのか……軽快なステップでヨチヨチと歩み寄って来た。



ランプの曲線を描いた硝子を嘴で軽くつつき、引いたり押したりする事で火の強弱を調整出来るピンを噛み始めた。


室内を照らす唯一の明かりが、無邪気な嘴によって強くなったり弱くなったりと忙しなく変わる。


「……アルバス。………こらっ……めっ。……駄目だよ……駄目だって……」


雛を叱るその口調は比較的穏やかだったが、可愛らしい雛の頭上でゆっくりと構えられた拳骨は、その小さな身体をぶつには少しばかり強力過ぎるかもしれない。

……もしかしたら、もしかしなくとも半虐待レベルかもしれない、与えられるであろう恐怖など知る由も無く、アルバスは「チチチ」と無邪気に鳴きながらピンを噛む。




悪意も無く、苛める気など毛頭無い、ある意味恐ろしいレトの拳が振り下ろされようとした………その途端、だった。







アルバスの嘴が、ピンをグッと、奥へ押しやった。




誰の意志でも無く、ランプの火は、フッと………消えた。
















一瞬で、この一室を黒に染めるべく待ち構えていた闇が、隙を突いた様に自分達を飲み込んだ。




急に光を断たれた瞳は、戸惑いながらも周囲の輪郭を探り映す。