低い声で呟く様に話しながら、ナイフを磨き続けるザイ。
マントに覆われた大きな背中を丸くして、黙々と刃を磨く父の姿をじっと見詰めて………レトは、ポツリと言った。
「………父さんが何かしていても……僕は…父さんを嫌いになんかならないよ……」
…ぴたり、と……器用なザイの手が止まった。
………ゆっくりと顔を上げると、マントにくるまって寒さを避ける様に縮こまり、こちらをじっと見てくる息子と目が合った。
「………………そうか……?……それは…分からないぞ……」
苦笑を浮かべるザイ。再度ナイフを磨こうと視線を下ろすと、レトは続けて言った。
「……………だって僕の親は…………父さんしか………いないから………」
………。
ザイは、まだ充分に磨き終えていないナイフを、ゆっくりと鞘に納めた。
………微かに浮かんでいた微笑は、その表情には無かった。
「―――………本当の私を知らないから、お前はそんな事を言えるんだ……」
「………………何……?」
何て言ったの、と聞き返してきたレト。しかしザイは、無言だった。
「………父さん……?」
「……………………………レト、王子を起こしなさい」


