「………………アレクセイ、様………」
「………本気モードでいきますか」
少しドスのきいた、部下の低い囁きに、アレクセイはピシッと姿勢を正した。
「弁解の余地など無いぞ!!」
「貴様らの見え透いた魂胆に付き合っている暇など、無いわ……!」
「………縄を持って来い!!捕らえるんだ!逃がすな!!」
…鋭利な刃先がジリジリと間合いを詰めて来る。
その中央で生け捕りにされそうな使者達は、まるで人事であるかの様に、その様子をただ傍観するのみだ。
「………牢屋に入りに来たのでは無いのですが……」
「……うるさい!………異端者が…!………生きて帰れると思うな……」
グッと槍の刃先がアレクセイの首筋に突き付けられ、ひんやりとした冷たい無機物が青白い血管に触れた。
…危機迫る事態。
そんな中で、この老人は一体どれ程肝が据わっているのか…。
………当てられた刃の面を、細い指の腹でグッと押し返してきた。……………笑顔で。
「………生憎…私は、墓穴は故郷で掘ると決めております故………こんな所で無駄死にはしたくなどありません」
「…………このっ…!」
………堪忍袋の緒が切れた。
―――長い槍は弧を描き、銀の光沢を老人の細い首に向かって勢いよく走った。
―――首を、刎ねる。
たった数人の使者に、それも老人一人に慈悲も何も無く、兵士の殺気は動作となって…現れた。
………空を切り
次には滑らかな切断面が見えるか、否か……。
………その瞬間。
―――ギンッ


